再会〜懐かしき記憶〜


 

 

何時の間にか当たり前の様な生活が続いていた。だからかも知れない。少しばかり油断していたのだろう。

「もう、あなたの事好きで居続けるのが辛い」

それはある日、彼女の口から出た言葉だった。その言葉が出て初めて俺は彼女に対して今まで何をしていたのかが分かった。いや「何をしていた」という表現はおかしいのかもしれない。

正しく言うなら「何もしていない」のだ。そう、当たり前の生活が続いていたから、気付けなかった。隣に居るのが、そこに彼女が居ることが当たり前になっていたから。

そんな時、家に一通のはがきが届いた。それは懐かしい顔が揃う同窓会。気を紛らわせる事が出来ると、俺は普段行くことの無い同窓会の案内の出席の欄に丸を付けた。

その一通のはがき、初めて顔を出す同窓会によって、とても懐かしく、そしてとても切ない体験をすることとなることを、今の俺は何一つ分かってはいなかった。

このときはそれよりも、彼女のことを考えていた。

 

 

同窓会当日、はがきに載っていた地図を頼りに街を歩いていた。手紙の文面からして毎年のように同じ場所で同窓会を開いているらしかった。

「えっと・・・・・・」

街の道なり、並ぶ建物とはがきの地図を見比べながら同窓会の開かれる場所を探している途中、突然背中をぽんとたたかれた。

島崎(しまざき)君。久しぶり!」

背中をたたかれた感触に俺が後ろを振り向くと同時にそう、声が掛けられた。

見ると俺と同じくらいの年の女性がそこには立っていた。その女性の顔はどこか見覚えがあり、でも初めて会う人で、俺は少し混乱していた。

「あ、もしかして気づいてない?それとも忘れてる?」

女性は少し驚きながら俺の顔を見詰める。

「あれから十年近く経ってるもんね。分からなくて当然かな?」

「あんた、誰だ?」

女性の言葉に更に混乱した俺は、女性に一言言った。その一言で、女性は自分がまだ名乗っていなかったことに気づいたようで、少し恥ずかしそうにしていた。

「ごめんね。えっと私、松宮(まつみや)志穂(しほ)。同じクラスだったんだけど、覚えてる?」

その彼女の言葉に、古い記憶を手繰り寄せる。松宮志穂。松宮志穂・松宮・・・・志穂。

「あ・・・・」

「思い出した?」

俺の言葉に、松宮は嬉しそうな顔を向ける。

「ああ。でも全然分からなかった。松宮かなり変わってたからさ」

そう。俺が知っている松宮は地味な格好をしていてクラスのやつにもあんまり馴染めていないようなそんな印象でしかなかった。

でも、今目の前に居る松宮は、派手とまではいかないが、落ち着いたセンスのいい服を着ていたし、俺に話しかけてきたときの様子も、あの頃と全然違っていた。

「それはそうだよ。何時までも同じじゃないよ。島崎君だって変わったよ?」

最初誰だかわからなかったもん。そう言って松宮は笑った。

「そういえば、こんなところでどうしたの?」

彼女が不思議そうに聞いてきて、俺は今何をしていたのか思い出した。

「同窓会、出席するんだけど、場所が分からなくてさ。お前は出席するのか?」

「同窓会?でも同窓会の時間まで、まだ一時間以上も時間無かったっけ?」

松宮の言葉に案内が載っているはずのはがきを見た。

「・・・・・・・・・・」

場所ばかり気になって、時間をよく確認していなかった。同窓会の時間まであと二時間ほどある。

「どうしよう。時間、かなりあるよ」

俺が余程情けない声を出したのだろうか。松宮はその場で拭き出したかと思うと笑い出した。

「そんなに笑うことかよ」

俺は笑われたことが恥ずかしくてちょっとむくれた声を出した。

「ごめん。じゃあさ、私と話しようよ。久しぶりの再会もかねて」

松宮の提案を、俺は二つ返事で了承した。他にすることも無かったし、どうしてだか、もう少し松宮と話をしていたいと思ったからだ。

「あ、でも先に場所確認しておかないと」

俺のその言葉に松宮は笑顔で答えた。

「大丈夫。その場所知ってるから」

 

 

さっき居た場所のすぐ近くの喫茶店。俺たちはその店へと入っていった。店の窓際の席に向かい合わせに座る。

飲み物を頼んで、その後、俺たちは話し始めた。

「何かあったの?」

松宮の最初の一言に俺は飲もうと思っていたコーヒーを持ちながら一瞬固まった。

「どうして、わかるんだ?」

俺の顔を見て、松宮は真剣な顔から少し柔らかい顔へと変えるとん〜?と一言言ってから話しはじめた。

「だって一回も同窓会にでなかった島崎君が突然出席するなんて何かあったのかなって思ってさ」

松宮のその言葉を聞いて俺は驚いた。

「そんなことで分かるのか?ただの気まぐれだとか思わなかったのかよ」

「それになんか暗い顔してたしね」

そうでしょ?そういって笑った松宮の顔から目が放せなかった。

「一回もってことは・・・お前は同窓会必ず出席してるのか?」

「当たり前でしょ!」

ピースをしながら勝ち誇ったような笑顔に俺は思わず笑い出す。

「なっ!笑うこと無いでしょ!」

少し頬を染めながら、松宮は怒った。久しぶりだったこんな日常。穏やかだと感じる時間。あいつと一緒に居るときでさえ、こんな感じを味わうことが少なかった。

 

「じつはさ・・・・・・」

俺は松宮にならあいつとのことを相談してもいいと思った。松宮ならちゃんと俺の話を聞いてくれるような気がしたから。

「相談があるんだ。いいか?」

俺はそう切り出すと、松宮の顔を見た。松宮は俺の様子に何かを感じ取ったのか、真剣な顔をして頷いた。

俺はそんな松宮の様子を確認してから、ずっと持ったままだったコーヒーを一口飲むとゆっくりと話し出した。

最近のあいつとの生活。今日松宮と会って改めて感じたこと。そしてあいつから告げられた、別れにも近い言葉・・・。

全てを話し終えると、俺は松宮が話し始めるまでただじっと待っていた。

 

 

「よく話し合ってみなよ」

ポツリと松宮の口から出た言葉。

「お互いまだ好きなんだから、話し合えば大丈夫だよ」

松宮はそう言うとにっこりと笑った。胸につかえていたものが、ほんの少しずつ溶け出していくような、そんな気持ちになった。

「ありがとう。松宮」

「どういたしまして。あ!」

突然松宮が大きな声を出した。

「どうしたんだ?」

「もう、同窓会始まっちゃってるよ!」

松宮の声で時計を見ると三十分ほど経っていた。俺たちは店を出ると急いで場所まで向かった。

「へぇ〜。こんなところあったんだ」

案内された場所に着いた俺は目の前の建物を見ながらそう呟いた。

「松宮、中入ろう・・・・・・」

松宮が居るはずの隣を見てみたが、何故か其処には松宮の姿は無かった。先に中へと入ったのかな。そう思い、俺は店の扉を開け、中へと入っていった。

店に入ると懐かしい顔がいくつもあった。久しぶりだななんて声を掛け合いながら、俺は当時一番仲のよかったやつの隣へと座った。

「遅かったな」

「ああ。松宮と偶然会って話してたんだ」

「え・・・松宮?」

「ああ。松宮志穂。知ってるだろ?」

俺は何気なく言ったつもりだったが、見る見るうちに青ざめていく顔を見て俺は不思議な顔をした。

「どうしたんだよ」

 

 

 

「松宮は、もうずっと前に死んでるんだぞ」

 

 

 

「え・・・・・?」

俺は言葉を失った。

そいつから詳しい話を聞くと、松宮が死んだその日、俺だけはなぜか連絡が取れなかったらしい。そういえば、一度も今回の同窓会へ出席すると聞いてはいなかったように思う。

 

 

『島崎君!』

 

 

俺は松宮の笑顔を思い出した。同じクラスに居たときの松宮ではない、本当の松宮の笑顔を。ひょっとしたら、最後の挨拶のつもりで俺の前に現れたのか、今の俺の様子を叱りに来たのか。

それは分からない。けれど、俺は松宮志保と言う一人の女性をずっと覚えていようと思った。

何故か涙が一筋頬を伝っていた。

 

 

『お互いまだ好きなんだから、話し合えば大丈夫だよ』

 

 

「・・・・もしもし、俺だけどさ、今から会えないか?話したいことがあるんだ」

俺は気持ちを落ち着けながらそう電話で切り出した。きっと松宮が応援してくれるに違いない。俺は今度松宮の家に行こうと思った。松宮に会いに、そして今回の結果を報告するために・・・・・。

 

 

 

 

 


 

あとがき。

しょっぱなからこんな意味不明な文章でごめんなさい!!!!

もう全て謝るしかない・・・・。

是はある事情により作った話なのですが、辛かった。話考えて出来上がるまで2時間程しか時間を使えなかったので。

だからなのかこんなにわけの分からない話になってしまった・・・・。

ほんとすいません。いつかはリベンジ果たせればと思います。

では、読んで下さって有難う御座いました。

 

 


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